汗について(ワキガと皮膚と汗の関係)
・エクリン汗腺
人間には二種類の汗腺があります。
一つはエクリン汗腺です。エクリン汗腺からはエクリン汗が分泌されます。
これは私たちが普段から「汗」と呼んでいるものです。
エクリン汗腺は唇や耳の外耳道、爪の裏や亀頭を除いた人間の体のほぼすべてに分布しています。
エクリン汗腺の数は人種によって異なり、暑い地域に住んでいる人ほど多く存在します。
日本人の場合約350万本。一平方センチ当たり200~300本のエクリン汗腺があります。
エクリン汗腺の大きさは60~80ミクロンくらいで肉眼では見えません。
分泌されるエクリン汗は1パーセント弱の塩分などのミネラル、99パーセントの尿素、乳酸などを含んだ水分で構成されています。
一日約1,5~2リットル分泌されていて、体温の調節、皮膚表面の殺菌などの役割を果たしています。
エクリン汗は粘り気もなく無臭です。
・アポクリン汗腺
アポクリン汗腺からはアポクリン汗が分泌されています。アポクリン汗腺という特殊な汗腺は人間のワキや陰部のようなごわごわとした毛の付け根、まれにおへそや乳首、肛門の周辺、耳の穴の中に存在します。
アポクリン汗腺は皮下組織に位置し、糸がからみあったような形で、出口は毛穴と合流しています。
アポクリン汗腺は日本では「大汗腺」ともいわれます。なぜならその大きさはエクリン汗腺の10倍ほどもあり、肉眼でも見えるからです。
アポクリン汗腺の成分は、脂肪、タンパク質、鉄分、色素、蛍光物質、尿素、アンモニアなどで、汗といっても粘り気のある乳白色がかった液体です。
分泌された直後はほぼ無臭です。じわじわと一定の周期で分泌されます。
・皮脂線
皮脂腺は表皮を保護するために、皮脂と呼ばれる脂肪を分泌しています。
皮脂腺は皮下組織に位置し、ぶどうの房のようになって固まった脂肪細胞を新しい脂肪細胞ができるたびに皮膚表面に押し出します。
それが汗と混ざり合って薄い膜を作り、肌を保護する働きをしています
皮脂がなければ皮膚はカサカサ、パサパサになってしまいますが、分泌量が多すぎれば逆に、肌がベタついてしまいます。
女性が気にする多くの肌のトラブルはこの皮脂線が関係しています。
皮脂腺の活動は気温によって左右されます。気温が上がり皮膚表面の温度が上がると皮脂の分泌は活発になり、温度が下がればその活動は低下します。
夏の肌のベタベタはこのせいなのです。
皮脂腺は毛の根っこを包み込んでいる、毛包に付着しています。独立した出口はなくアポクリン汗腺の少し上にあって毛穴に通じています。
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なぜワキガ(わきが)は臭うの?
前出の三つの汗腺類(エクリン汗腺、アポクリン汗腺、皮脂腺)が連携しあい、ワキガ(わきが)が発生するメカニズムを作り上げています。
ですから三つの要因が揃うことになるアポクリン汗腺が存在する場所にはどうしてもワキガ(わきが)臭が発生する可能性があるのです。
ではどうしてそれ自体はほぼ無臭のアポクリン汗がワキガ(わきが)臭になるのでしょうか?
それには様々な見解があります。
1953年にシェリーという学者が以下のような実験を行いました。
1.分泌直後のアポクリン汗を試験管にいれて2時間放置していたら強いワキガ(わきが)臭を発した。
2.試験管をあらかじめ殺菌しておくか、あるいは制菌剤を加えておくと、ワキガ(わきが)臭は発生しなかった。
このことから、アポクリン汗は体外に排出された後、細菌と接触することによって、独特のワキガ(わきが)臭を作り出すことがわかったのです。
その後の研究や実験でも細菌が悪臭発生の原因の一つであることが突きとめられました。
まずアポクリン汗腺から分泌された汗がエクリン汗腺から分泌された水分の多い汗によって脇の下全体に広がります。
そして、皮膚の表面に住み着いている細菌や雑菌類と会い、腐敗し、臭いを発生し始めます。
そこへ皮脂腺からの脂肪も加わり、さらに臭いを強めていきます。この腐敗臭こそがワキガ(わきが)の臭いとなるのです。
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ワキガ(わきが)になる人ならない人の違いは?
誰にでもアポクリン汗腺は存在し、ワキガ(わきが)臭は誰にでもあるといえます。ではその強弱の差はなぜ生まれるのでしょう?
・アポクリン汗腺の量の違いが関係している。
ワキガ(わきが)の人はそうでない人より、アポクリン汗腺が多く、したがってアポクリン汗の量も多いと言われています。
確かに体臭の強い欧米人は日本人に比べてアポクリン汗腺の数が多いのです。またアポクリン汗腺の大きさも違いがあるようです。
ワキガ(わきが)の人のアポクリン汗腺は発達して大きく、平均してそうでない人の3倍くらいあるといいます。
大きく、数も多ければアポクリン汗を分泌する量も格段に多くなるのはあきらかですね。
・アポクリン汗の成分が関係している。
アポクリン汗の成分にも個人差があり、ワキガ(わきが)の強弱は成分の違いに関係しているという考え方です。
前出のようにアポクリン汗は脂肪、タンパク質、鉄分、色素、蛍光物質、尿素、アンモニアなどの成分から成り立っています。
ワキガ(わきが)臭の強い人ほど、多量の鉄分と、脂肪が分泌され、相互作用で悪臭を放つという説です。
しかし、これには反対説もあり、鉄分は関係なく、脂肪の中の低脂肪酸が多いと悪臭が発生するという説もあります。
・皮脂腺から分泌される脂肪が関係している。
皮脂腺から分泌される脂肪は本来弱酸性で殺菌力がありますが、ワキガ(わきが)の人はその分泌量が多く、皮脂膜のアルカリ度が高くなるので細菌が繁殖しやすくなるという説です。
細菌がたくさん繁殖すれば、それだけ脂肪もよく分解して腐敗臭が強くなるのです。
このようにワキガ(わきが)の臭いについては諸説ありますが、原因については一つだけではなく、前出のようないくつもの要因が絡み合って強い臭いが発散されていることは確かなようです。
アポクリン汗腺の数や密度に始まり、その成分、また汗腺類全体の活動具合や、皮膚に住む常在菌の種類や、数など、人の肌のコンディションは少しずつ違っています。
こうした個人差によって、どんな臭いがどの程度の強さで発生するのかが決まってくるのです。
つまりワキガ(わきが)発生の要素は遺伝的なものと長年の生活習慣による体質的なものであるといえます。
なので、単にいつもキレイに清潔にしておけば臭わないというものではないのです。
また、季節なども関係します。
日本は高温多湿の風土でワキガ(わきが)の人にとって梅雨から夏にかけては本当につらい季節です。
どの家庭にもカビやダニなどが発生しやすいのと同じように、ワキの下もムレて雑菌が繁殖しやすいのです。
多少気温が高くても、湿度が低ければワキの下もすぐに乾燥して臭うことはありません。
気温が上がり、かつ湿度が高ければワキの下がいつもジトジトして嫌な臭いがこもりがちになるのです。
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